クラリネットについて
みなさんこんにちは。
童謡「クラリネットをこわしちゃった」で有名なクラリネット。フランスでは、クラリネットを題材とした子供の歌「J’ai perdu le do」として知られています。
この曲の発祥はフランスだという説があるのですが、明確な証拠などなく、不明なことが多いんだとか。そんなクラリネットですが、この楽器はクラシックやジャズ、ポップスといった様々なジャンルで使用されます。
低音域から高音域まで4オクターブ音域をもち、様々な音色を奏でることができます。今回はそんなクラリネットの歴史と特徴についてお話したいと思います。
クラリネットの歴史
クラリネットは、ドイツのニュルンベルクのヨハン・クリストフ・デンナーが1700年頃、フランスの古楽器シャリュモーも改造して作ったといわれています。
シャリュモーという楽器は、シングルリード楽器で、後期バロック時代(※1)から初期古典派(※2)の時代に用いられた楽器で、オーケストラに使用されていたそうです。
シャリュモーは今のクラリネットのようにキーやトーンホールがたくさんあるわけでもなく、とても狭い音域しか演奏することができませんでした。そこで、デンナーがキーを設けたことにより、音域が広くなりました。
その高音の音色が小型トランペット「クラリーノ」の音色に似ていることから「クラリネット」という名前がつけられました。
さらにクラリネットが発達したのは19世紀のこと。ドイツ人のミュラーが13個のキーがついたクラリネットを開発しました。この楽器は、後に「エーラー式クラリネット」の基礎となりました。現在も使われているエーラー式クラリネットは暖かく艶のある音が特徴で、ドイツの演奏家が好んで使うそうです。ベルリンフィルや、ウィーンフィルといった伝統あるオーケストラは、エーラー式のクラリネットを使用しています。
一方フランスでは、クラリネット奏者であり、パリ音楽院の教授でもあったクローゼ(エチュードで有名ですね)と楽器製作者のビュッフェにより「ベーム式クラリネット」が開発されました。明るく華やかな音色をもち、エーラー式よりも運指が簡単なため、初心者でも扱いやすいです。フランスをはじめ、日本ではほとんどベーム式クラリネットが使用されています。
クラリネットの構造と解説
クラリネットの構造は、上からマウスピース、バレル(樽)、管体(上管、下管)、ベルになっています。マウスピースに葦でできているリードを取り付け、息を吹き込みリードを振動させることで音が鳴ります。リードを取り付ける器具をリガチャーといいます。それぞれの特徴を説明したいと思います。
- マウスピース
歌口、唄口、ベックともいい、硬質ゴム製が一般的でエボナイトがよく使われています。昔は、木製のものが使われていました。この部分は、クラリネットの音色、吹き心地を決める大事な部分で、管体を選ぶより神経を使う奏者が多いです。「アクリル樹脂」や「フェノール樹脂」「クリスタル・ガラス」といった素材のマウスピースもあります。メーカーによって作りが違いますし、個体差もあるので、購入の際は慎重に選びましょう。 - リード
一般的に、葦やプラスチックが使用されます。メーカーとしてバンドレンやD’Addario WOODWINDS、ゴンザレス等があります。同じ楽器を使っても、リードによって音色や演奏スタイルを変えることができます。そのため演奏者は、自分の吹き心地や音色、音楽などに合わせてリードを選定します。マウスピースメーカーが推奨する硬さの範囲を示している場合が多く、奏者の大半はメーカーのリードを使うことが多いです。リードの質は葦の品質に左右されます。そのためリードによって個体差があり、奏者によっては自分で紙やすりなどを使いリードを調整をする人もいます。
- リガチャー
リードを固定する部品で、昔は紐で固定されていたそうです。今はベルト状の皮のものや、金属性のものがほとんどです。この部分はリードを固定するだけでなく、リードの振動をクラリネット管体に伝える役割があります。リガチャーを選ぶ際は、リードの振動を妨げないものを選ぶようにいましょう。皮、合成樹脂製のリガチャーはリードの振動を吸収するため柔らかい音色になります。ですが、音量を出すのに、息の量を多くしないといけません。金属のリガチャーは、リードの振動を吸収しにくいので、少ない息の量でも楽器が鳴るようになります。高次倍音が吸収されにくいため、よく通る音が出ます。
マウスピース、リード、リガチャーは密接な関係にあり、組み合わせによって音色や吹き心地が変わります。一つでもバランスが崩れてしまうと、演奏が困難になります。奏者は自分に合った組み合わせや音楽スタイルに合わせて、組み合わせを変えています。
- バレル
樽、ネックともいい、マウスピースと管体をつなぐ部分です。音色や吹き心地に影響する部分で、メーカーによっては、同じ素材以外にも、様々な素材を使ったものや、形状の互換バレルを作っています。長さによって楽器全体の音程が変わるため、気温が高く音程が上がりやすい日本の夏場は長いバレルを使い、音程が下がりやすい冬の時期は短いバレルを使い音程を調整します。
- 管体
木製が一般的で、グラナディラという木がよく使用されています。グラナディラの粉末とグラスファイバーなどを混合して成形した合成素材のものもあります。クランポンから、「グリーンライン」というグラナディラとカーボンファイバーなどの素材を配合したものがでています。これは、木材と違って湿度や気温によるコンディション変化の影響を受けにくく、常に安定した状態を維持できる特徴があります。 - ベル
マウスピースの反対側に位置する部品。この部分はバレルと同じ素材が使われています。この部品はキーも音トーンホールもついていないものが一般的です。メーカーによって内径やサイズが違います。音程、音色のへの配慮から穴が開いているモデルもあります。
音域ごとの特徴
クラリネットは楽器の技術の進歩により幅広い音域と音色を手に入れました。
音域ごとに特徴があり、それぞれ名前が付いています。
- シャリュモー音域
クラリネットで最も低い領域で、暖かく、太く丸い音色が出ます。先ほど紹介した低音を得意とするシャリュモーにちなんで名付けられました。
- ブリッジ音域
喉の音、スロートノートともいわれています。この音域は、デンナーがシャリュモーを改良する際、シャリュモー音域とクラリオン音域をつなぐために取り付けられた領域なのでブリッジ音域と呼ばれています。暗くくすんだ音色で、倍音が少ないのが特徴です。運指やコントロールが難しいため、苦手意識のある人も多いかもしれません。
- クラリオン音域
クラリネットの名前の由来でもある音域で、明るく艶があり、華やかな音色が特徴です。吹奏楽やオーケストラ曲のメロディーラインでこの音域がよく使用されます。
- アルティッシモ音域
最も高い音域で、細く甲高い音色が特徴です。音程が取りにくく、音が上がるにつれ音色が鋭くなっていきます。コントロールが難しいので、楽器を始めたばかりの人は、音が出ないかもしれません。
まとめ
クラリネットは木管楽器の中で比較的新しい楽器です。吹奏楽やオーケストラにおいて、管楽器の中で主旋律を奏でることが多いクラリネット。楽器メーカーごとにクラリネットの音色は異なるので、聴き比べたり、吹き比べたりすると面白いと思います。今もクラリネットは開発、改良が行われています。
時代によって求められていた音色が違うため、今のクラリネットの音色と昔の音色を聴き比べると、また違ったクラリネットの魅力を感じることができます。たくさんのクラリネットの音色を聞いて、自分の一番好きな音を見つけてくださいね。