練習前のあれは無駄じゃなかった!? 運動によって得られる3つのメリット
みなさんこんにちは。騒がしく泣いていたセミの鳴き声は消え、過ごしやすい季節になってきました。甘いキンモクセイの芳香が、秋の訪れを感じさせます。
スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋。みなさんはどのようにお過ごしでしょうか。今回はスポーツの秋と題しまして、吹奏楽部における、朝のランニング、練習前のランニングの効果について考えてみたいと思います。
現役の中学生や高校生はもちろん、吹奏楽部なのになぜか、朝の練習前や放課後の練習前にランニングをしていた経験はありませんでしたか?「肺活量を増やすため」とか「体力をつけるため」とか「伝統的にやっている」とか、理由は様々だと思います。
練習前のランニング。一見楽器を演奏する上では特に意味のないように感じると思います。ですが、実はランニングは学習速度を飛躍的に上昇させます。
今回は、運動によって得られる3つのメリットを紹介したいと思います。
今回参考にした書籍↓
・『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』NHK出版
ジョンJ.レイティ withエリック・ヘイガーマン/著 野中香方子/訳
・BRAIN DRIVEN ( ブレインドリブン ) パフォーマンスが高まる脳の状態とは
青砥瑞人 ディスカヴァー・トゥエンティワン
脳に成長に欠かせないBDNF
ランニングと書きましたが、一般的にジョギングは最大心拍数の65%~75%の中強度運動を指し、ランニングは75%~90%の高強度の運動を指します。
恐らく、みなさんが行っていたであろう、練習前の運動はジョギングだと思われます。体力をつける目的なら中強度の運動で充分だと思います。
そこで本題です。
運動をすることで、脳でBDNF(脳由来神経栄養因子)と言われる物質が作られます。BDNFは脳の栄養と言われていて、脳の成長や再生を促す役割があります。
それだけではありません。以前は、脳のニューロン(神経細胞)の数は生まれた時からきまっていて、加齢とともに減っていき、増えることはないといわれていました。しかし、最近では、さまざまな要因(感情面や認知面、環境との相互作用)で後天的に増えることがわかっています。これをニューロン新生といいます。
運動は、ニューロンを増やすのに効果的と言われています。また、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンといった神経伝達物質の分泌を促す効果もあります。これらは、集中力、記憶力、ストレスに対して強くなる効果があります。
メリット① 頭がよくなる
運動をすることで、脳でBDNFが分泌されます。これは記憶を司る「海馬」に多く含まれています。それと同時にニューロン新生を促します。新しく生まれたニューロンは白紙状態の幹細胞(※1)として生まれ発達します。この運動中に生まれたニューロンは、長期増強(※2)を誘発しやすい特徴があります。
新しく生まれたニューロンは、スポンジのように吸収しやすく、頭に浮かんだ思考をとりあえず捕まえ、脳の前頭前野(メリット②参照)がそれらを長期記憶としてつなぎとめるか判断します。
つまり、運動をしたあとは情報を吸収しやすいということです。
※1・・・自己複製と様々な細胞に分化できる特殊な細胞のこと。
※2・・・2つのニューロンが同時刺激されることで、ニューロン同士のつながりが持続する現象のこと。なにかを学習する時は、このニューロンのつながりを強化することが欠かせません。脳が情報を取り込むように命じられると、自然にニューロン間の活動がおきます。ニューロン同士が強く結びつくことで新しい情報を記憶として定着していきます。
メリット② 集中力が上がる
この集中力の向上については、二つの側面があります。
- 長期的
習慣的に運動を取り入れることによって、基本的な集中力が上がります。スムーズに集中しやすくなり、長時間集中力が続くようになります。長期的に運動を取り入れることにより、脳の血流があがり、BDNFがでることで、脳の前頭前野が鍛えられます。
前頭前野は、ヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている大事な部分です。やる気、集中力、コミュニケーション能力、論理的思考、客観的思考、行動や感情のコントロールといった機能を持ちます。 - 短期的
運動直後は、集中力を発揮することができます。運動直後は、血流が上がり、酸素が行き渡ります。脳に酸素が行き渡ることで、ドーパミン、ノルアドレナリンと言われる神経伝達物質が分泌されます。これらは集中力や判断力、やる気を上げるといった効果があります。
メリット③ 健康になる
運動をすることで、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。別名幸せホルモンともいわれていて、様々な効果を得ることができます。
- ストレスに対して強くなる
- 睡眠の質が上がる
- 自立神経が整う
- 感情や精神が安定する
セロトニンは日光を浴びたり、ジョギングやランニングといったリズミカルな運動をすることで、生成されます。
このセロトニンの原料となるトリプトファンは、食べ物をから摂取する必要があります。ビタミンB₆と一緒に接種することで合成されます。(例:赤身肉、鶏肉、牛レバー、カツオ、バナナ)
特に、バナナはトリプトファンの含有量が100g中15mgと少なめですが、セロトニンの材料に必要な栄養(トリプトファン、炭水化物、ビタミンB₆)を全て含むので、手軽にセロトニンを作ることができます。
まとめ
小難しい内容でしたがいかがでしたか。
運動をするメリットは計り知れません。ジョギングやランニングといった運動は、コストパフォーマンスが高い趣味にもなります。
- 頭がよくなる
- 集中力が上がる
- 健康になる
運動は、脳の機能を最善にする唯一の手段にして最強の手段。読書前や勉強、楽器の練習前に軽い運動を取り入れることで、効率よく学び、集中して取り組むことができるでしょう。
ただ、走ったからといって、楽器そのものが上手になるわけではありません。正しい‟学ぶためのメソッド”が必要になります。部活動の時間は限られていると思うので、計画を立てて、無駄なく練習を行うこと、正しく練習することを心がけてみてください。それだけでみるみる上達して、音楽の楽しさや、自己成長を感じることができるでしょう。
ぜひ、参考にしてみてください。