吹奏楽コンクールで上位入賞している中学・高校の特徴  楽器・演奏編

みなさんこんにちは。

僕にとって中学・高校生時代。8月と言えば吹奏楽コンクールでした。仲間たちとたくさん悩んで練習をし、ときには泣き、ときには喜び青春を謳歌しました。その時に得たものは人生でかけがえのない宝物です。

そんな経験を経て、音楽大学に進学し、クラリネットの先生になり、たくさんの中学校・高校・一般の吹奏楽団の方たちの指導や個人レッスンに携わることができました。

演奏団体によりそれぞれ個性があり、演奏する目的や目標は違います。ですが、‟よい演奏をしたい・たくさんの方に聴いてもらいたい”という気持ちは、みんな同じだと思っています。

今回は、吹奏楽指導で携わった経験からみえる、吹奏楽コンクールで上位入賞している中学・高校の特徴をお話します。

全国大会に行っている生徒全員が個人技術に長けているわけではない

初めにお話しするのは、生徒一人一人の演奏技術についてです。全国大会まで行くようなバンドはみんな演奏技術があると思う方がいるのですが、実際はそんなことありません。中学生だとまだ体格的に大きくなく不安定なことが多い。高校生になると、体格もよくなり演奏するのが容易になりやすい。

中学生・高校生なら、 演奏技術は練習量・時間・質にほぼ比例します。そのため、質がよく、状態のよい楽器を使っていれば、それなりに吹けるようになります。そのため、個人の演奏技術という観点だけでいえば、たくさん練習することで全国大会に出るようなバンドの子にも引けを取らない演奏ができます。

ですが、吹奏楽は大人数のアンサンブル。たとえ、とても上手に吹ける人が一人いても、音楽に大きく影響することはありません。そのため、コンクールで上位入賞しているバンドは、たくさん練習をすることで演奏者全体のレベルを上げています。

練習だけなら、みんなコンクールに向けて練習をしているはず。ではなぜ、全国大会に行くようなバンドは、他のバンドと比べて演奏者のレベルが高い人が多いのか。生徒の努力ももちろんありますが、中学校・高校で共通してよい指導者(講師も含む)がいて状態のよい楽器を使っているからです。

とくに楽器の状態は、演奏技術の向上に大きく関わります。そのため、生徒が使っている楽器をよい状態に保つための工夫をしています。それは、楽器の講師を呼ぶことです(顧問の先生が理解している場合もあります)。各楽器の講師は楽器のよい状態を知っていて、自然に鳴っているか鳴っていないかが、音を聴けば分かります。

定期的に講師を呼ぶことで、生徒に自覚がなくても、演奏者のコンディションはもちろん、楽器の状態を管理してもらえるわけです。管楽器において、楽器のよい状態を知ること、保つことが上達の近道です。

よい指導者がいるかいないかで、大きく技術に差が出ます。子供たちは練習の中でたくさん考え、試行錯誤を繰り返しています。ですが子供たちだけでは限界があります。どんなに教則本を読み込んでも、百聞は一見に如かず、実際に講師の演奏を聴いたり、見たりするのには敵わない。実際に見たり聴いたりするほうが、練習効率が何倍も上がります。子供たちは、先生の動きを模倣して、演奏技術の習得に励むのです。音楽の歴史は、模倣とコピーで、何事も物まねから始まります。

こうすることで、生徒の演奏技術を平均的に上げているのです。

とはいえ、小さい頃からピアノやキーボードなどをしていて、音感がある人は、上達が速いのは事実です。

全国大会上位にいく学校の特徴①

  • 顧問の先生、講師など、音楽・楽器に詳しい人が必ずいる。
  • 使っている楽器がよいもの(比較的に新しい楽器、きちんと調整に出されている楽器)が多い。

みんなお揃い、ハイモデルの楽器を使っていることが多い

中学校では、あまりみられないですが、高校にもなるとみんな使っている楽器はピカピカのものが多いです。中には、入学する時に買わされたとか、このモデルのものでなけ得ればならないと言われる子もいます。

なぜ、そのような学校があるかというと、新しくて(消耗していない)性能のよい(音色、特に音程)がよいものの方が、上手に聞こえやすいからです。
 

吹奏楽は、木管楽器、金管楽器の編成に打楽器が加わり、楽曲によっては、コントラバスも加わります。

そんな吹奏楽は、大人数でアンサンブルが大変です。音色・音程・リズムを正確に音楽に合わせなければなりません。リズムに関しては、練習を繰り返せば合うようになるのですが、音色、音程は簡単に合わせられるものではありません。

演奏者の持つ音感や演奏技術にもよりますが、音程を合わせる技術・感覚というものは訓練が必要で簡単に身に付くものではありません。

ある程度理解していても、自分の楽器を自由自在に操れるわけではなく、管楽器は管の長さが決まっていて、楽器によって、音程が高い・低い音というのは必ず出てきます。もちろん多少はコントロールはできますが、限度があります。

その点、昨今のハイモデル・プロフェッショナルモデルと言われる楽器は、性能がよく(個体差はありますが)音程がよく、とても鳴る。強弱のコントラストの差を明確に表現でき、音楽表現の幅も広がりました。

一緒に演奏したときの音程が合っているほど程音が多く豊かな響きになります。同じメーカーの同じモデルを使うことで、楽器が共鳴しやすい。性能もよく楽器の音程がよいので合わせやすく一石二鳥。同じものを使うことで、音響効果を高め、生徒たちのまだ未熟な音感・演奏技術の部分を補っているのです。

 

これだと、「ハイモデルの楽器を使ってない人は上手な演奏をできない?」と捉えられてしまいそうですが、そうではありません。

一番は、自分の気に入ったものを使うのがよいと思っています。どんな楽器でも、自由自在にコントロールできれば、あとは自分が奏でたい音色の物を使えばいい。ですが、吹奏楽コンクールでよいと判断される演奏は、音響効果の高い、自然な音楽です。

音響効果とは、バンド全体の音色に統一感があり、ホールのキャパシティに対して適切な音量バランスで演奏すること。自然な音楽とは、文字通り、急に速くなったり遅くなったりせず、聴いていて心地よいと感じられる音楽のこと。

吹奏楽コンクールには、出場できる人数が決まっています。この決まっている人数で、よりまとまりがあり、音響効果が優れた自然な音楽を奏でることが、コンクールで上位入賞するための肝になります。

全国大会に行きたい、上位入賞したいと考えたら、よく鳴り、音程のよいものを使う方が合理的で、ハイモデルでないものは状態がよくても性能の差で使われないパターンが多いです。もちろん演奏者の技術が卓越していた場合は別ですが・・・

全国大会上位に行く学校の特徴②

  • 少しでも音響効果を高めるために、性能の良いハイモデルの楽器を使っていることが多い。
  • 同じモデルの楽器を使うことで、音色や音程が合いやすいため、パートに統一感がある。

まとめ

今回は演奏面についてのお話でした。ハイモデルの楽器の話をしましたが、それは、周りと合わせるときの音響効果がよいという意味で、ハイモデルでないといけないという意味ではないので注意してください。ハイモデルじゃなくてもよい演奏する学校はいっぱいありますし、それぞれのバンドに個性が出て多彩な音色で魅力があります。

音楽そのもののよさは、楽器の性能ではありません。各演奏者が楽器を奏で、音が混ざり、響き合い、非現実的な空間を視覚的・聴覚的・感覚的に共有することに価値があります。

コンクールは、音楽の技能を競う催しで、みなさんはそれに向けてたくさん練習してくるわけです。得てしてコンクールの演奏が音楽の全てで、よい演奏の基準みたいになっていますがそうではありません。

吹奏楽を音楽の競技として捉えるのではなく、純粋な気持ちで音楽に耳を傾けることができたら、非現実な音楽空間を楽しむことができるのではないでしょうか?

とはいえ、コンクールではよい演奏をしたいはずですし、できるものなら上を目指したい。とくに中学生・高校生は可能性に満ちていて、努力の分だけ花が咲きます。それぞれの目標に向かって、コンクールを楽しめたらよいのではないでしょうか。

コメントを残す